Thunderbolt 4搭載端末にeGPU(NVIDIA GeForce RTX 3060)を接続してベンチマークを取ってみた(マイニング制限回避あり)

2021年3月16日

以前の記事で紹介したゲーミングUMPC「OneGx1 Pro」にはThunderbolt 4ポートが搭載されています。そのため、eGPUを接続することができ、これによりグラフィック性能を大幅にパワーアップすることができます。今回は、(スペックの割にVRAMを多く積んでいる&マイニング性能に制限をかけられているなどで話題の) NVIDIA GeForce RTX 3060 を手に入れたため、これをeGPU BOXに入れてUMPCに接続し、ベンチマークを取ってみた結果をまとめてみました。(マイニング制限回避についても記載しています)

eGPUとThunderbolt 4搭載端末について

eGPUとは、Thunderbolt接続によってグラフィックボードを外付けすることです。eGPUエンクロジャー(eGPU BOX)にグラフィックボードをさしてPCのThunderboltポートに接続して使用します。基本的にノートPCでの利用が想定されています。メリットとしてはノートPCでもデスクトップPC並のグラフィック性能を実現できます。一方で、接続方法がThunderboltのため処理によっては転送速度(帯域幅)不足になり、グラフィックボードの性能をフルに活かすことができない場合があります。

今まではThunderbolt 3が主流でしたが、Intel Core 第11世代 CPUを搭載しているノートPCには、Thunderbolt 4ポートが搭載されるようになりました。Thunderbolt 4とThunderbolt 3の違いは、性能要件にあり、転送速度(帯域幅)に差はありません。しかしながら、こちらの動画で明らかなように、Thunderbolt 4ポートを搭載している端末でのeGPUパフォーマンスはThunderbolt 3端末の使用時よりも明らかに向上しています。第11世代のチップセット(コントローラー)の性能が上がっているためだと考えられます。

今回、私は以下のeGPU BOXを使用しました。取っ手が使用できるため取り回しが楽な上に、大きさもeGPU BOXの中ではコンパクトだと思います。(Thunderbolt 3接続と書いてありますが、そもそも記事執筆時点でThunderbolt 4を謳っているeGPU BOXはありません。前述のようにThunderbolt 4と3では帯域幅に差はないため、eGPUメーカーも出す気はない=出す意味がないと思っているのではないかと私は考えています。いずれにしろ、こちらの動画で明らかなように、Thunderbolt 4ポートを搭載している端末でのeGPUパフォーマンスは明らかに向上しているため、既存のeGPU BOXを購入しても問題ないと思います。今後出るかも分かりませんし)

なお、eGPU BOXに付属するケーブルは非常に短いため、2mのActiveケーブル(転送速度低下のないもの)を別途購入しました。

また、今回使用したUMPCについては以下の記事で紹介したものになります。

NVIDIA GeForce RTX 3060 について

ここ最近は、ずっと半導体の供給不足などによってグラフィックボードが枯渇・大幅な価格上昇が起きています。そんな中、VRAM 12GBを搭載した後発のRTX 3060が発売されました。3060Tiと比べて価格の割に性能が微妙・NVIDIAによってマイニング制限が施されていると評されていましたが、こちらも現在品薄になっていて価格が上昇してきています。(後述のマイニング制限回避も原因かもしれません)

私は、5万円台で購入しましたが、今後さらに価格は上がっていくと予想しています。

eGPU(NVIDIA GeForce RTX 3060) ベンチマーク

本記事では、以下の環境(UMPCにRTX3060を搭載したeGPUを接続)でのベンチマークを測っています。もちろん、出力先ディスプレイ(4Kモニタ)はeGPU BOX側から出力しています。

CPUIntel Core i7-1160G7 (2.1GHz〜4.4GHz, 4コア8スレッド)
メモリ16 GB (LPDDR4X 4266Mhz)
SSDmicroPCI-e NVMe SSD 512GB
OSWindows 10 Home (64bit)
測定環境 (OneGx1 Pro UMPC)

比較値として、RTX3060をeGPUではなく直接PCに接続している(本記事では"eGPUなし"と表記)ベンチマークも記載しています (Thunderbolt 4 + eGPUの性能がeGPUなしにどれくらい肉薄しているかを見るため)。なお、RTX3060Tiなどの他のグラフィックボードとの比較は既に多く出回っていますので、それについては各自お調べください。

Geekbench 5

eGPUなしのスコアは、Geekbench 5 BrowserのRTX3060(デスクトップ版)の平均から算出。CUDAでの値は逆にeGPUの方が良い結果に。帯域幅のボトルネックが顕在化しないテストだったと読み取れます。OpenCLについてもeGPUなしに対して97%のスコアが出ており、こちらもボトルネックが出てこなかったと言えます。

3DMark

eGPUなしのスコアは、ITmediaさんのこちらの記事でのベンチマーク値を使用しています。PCのスペックが違うため単純比較は難しいですが、参考値として使用させていただいています。流石に3D処理でのボトルネックは少しあったようです。しかしながら、eGPUなしに対して94%のスコアが出ておりかなり健闘していると言えます。

FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク

eGPUなしのスコアは、3DMarkのときと同じくITmediaさんのこちらの記事でのベンチマーク値を使用しています。(PCのスペックが違うため単純比較は難しいですが、参考値として使用させていただいています)

大きな特徴として、解像度が高くなるほどeGPUなしとの差が縮まります。4Kの場合はeGPUに対して90%のスコアが出ているのに対して、FHDの場合はeGPUなしに対して80%ほどのスコアにとどまっています。とはいえ、Thunderbolt 4(第11世代Intelチップ)のおかげでeGPU特有のボトルネックは抑えられているように感じます。

マイニングについて (制限回避・ベンチマーク比較)

eGPUとは直接関係はないのですが、NVIDIA GeForce RTX 3060 の特徴として、マイニング制限が施されているという点が挙げられます。これは開発元のNVIDIAがグラフィックボードをゲーマーに届けることを優先したため、vBIOSレベルでマイニング制限が実装されています。このため、マイニングと思われる動作を検知すると自動的にパワーリミットを下げ、最大のハッシュレートを出さないように自動調整されます。

実際に私も、RTX 3060で有名なマイニングアルゴリズムを使ってマイニングを実施してみました。手元にGTX 1660Tiがあるため、それと比較したところ、ハッシュレートが25MH/sと同じになりました。RTX 3060がマイニングを検知してパワーリミットを100W近くまで下げた結果、GTX 1660Tiでマイニングするのと同じハッシュレートまで落ちたことになります。

しかしながら、このマイニング制限には記事執筆時点ではカラクリがあります。NVIDIAが施したマイニング制限というのは、"特定の"(有名な暗号資産に最適な)マイニングアルゴリズムのみが対象になります。そのため、別のマイニングアルゴリズムを使用して(他の通貨を)マイニングすれば、マイニング制限を回避できる可能性があります。

記事執筆時点では、Octopusというマイニングアルゴリズムを使用してマイニングを実施すると、マイニング制限を回避できます。以下、Octopusアルゴリズムでマイニングした際の、GTX 1660Ti と RTX 3060 のハッシュレートを載せておきます。(両者とも調整をしていない状態での計測です)

GTX 1660Ti
RTX 3060

パワーリミットもされずにマイニングされていることを確認しました。基本的に、RTX 3060 は GTX 1660Ti に対して+36%のマイニングパフォーマンスを発揮することがわかりました。消費電力は+50%ですので、WパフォーマンスはGTX 1660Tiに軍配が上がります。今後、NVIDIAによる対策がされるかもしれませんので、RTX 3060 をマイニング目的で購入するのはあまり得策とは言えないと思います。

追記:60MH/s超えを確認しました。意外とポテンシャルはあるかもしれません。

まとめ

実は今回始めてeGPUに手を出したのですが、Thunderbolt 4端末 + eGPUの相性が良いことが分かりました。Thunderboltによるボトルネックがそこまで大きく出なかったためです。eGPUをお考えの方はThunderbolt 4端末でのご利用をおすすめします。

また、NVIDIA GeForce RTX 3060 で意外とマイニングできてしまうことも分かりました(非推奨)。しかしながらGTX 1660TiのWパフォーマンスの良さも改めて実感しました。これはますますグラフィックボードが枯渇してしまいそうです...